ミラー・ユーリーの実験に系統樹、脊椎動物の前肢の相同やヘッケルの胚の絵、そして始祖鳥・・こいつらはみんなニセモノだ! なぜ教科書に掲載され続けるのか?
ダーウィンの進化論を否定するインテリジェント・デザイン(ID)構築者の一人、のジョナサン・ウエルズ(Jonathan Wells)が著して話題になった
Icons of Evolutionの訳本、
進化のイコン(コスモトゥーワン)が出版されています。
前に本屋で立ち読み、いや、座って読みました(^^)。宗教感が違うのでしょう、日本ではあまり話題になりませんね。

副題は、原著が"Science or Myth (科学か神話か)"で、日本語版は、"破綻する進化論教育 生物教科書の絵は本物か? " 日本語訳では、文献リストが略され(ウェブで紹介とか)、附記(日本における生物教科書事情)が追加されています。
原著の発売が2000年ですから、7年遅れですね。出版社がびびったのでしょうか。翻訳は、
創造デザイン学会。監訳は渡辺久義さんで、他の人は、経歴に危険が及ぶかもしれないということで、名前を伏せているそうで(^^;;。
■
意外と科学的 前宣伝から、宗教がらみのトンデモ本かと思ったら、分岐学的系統関係も紹介されており、意外と科学的な話が展開されています。ただ、話は断片的で、代替となる理論があるわけではありませんけど。
目次は、以下のとおり。いずれも教科書に出てくる有名な図(話)です。ちなみに最初のミラー・ユーリーの実験とは、原始大気を想定した混合ガスに放電し、アミノ酸を合成したというもの。
- 序
- 日本語版への序――ジョナサン・ウエルズ
- 監訳者解説
- 1章 ダーウィン理論は科学か神話か?
- 2章 ミラー‐ユーリーの実験34
- 3章 ダーウィンの生命の樹(系統樹)
- 4章 脊椎動物の前肢の「相同」
- 5章 ヘッケルの胚
- 6章 始祖鳥――失われた環
- 7章 オオシモフリエダシャク
- 8章 ダーウィン・フィンチ
- 9章 四枚羽のショウジョウバエ
- 10章 ウマの化石と導かれた進化
- 11章 類人猿から人間へ――究極のイコン
- 12章 進化論の障碍
- 附記 日本における生物教科書事情
- 索引
「イコン(聖像)」とは、進化論を刷り込むための聖なる画像という意味とか。進化論を説明するために教科書に載っている始祖鳥などの画像のことです。"遺恨"ではないようで。
■始祖鳥、始祖鳥と騒ぎすぎ。始祖鳥は単なる通過点
もちろん興味は、6章の始祖鳥。分岐論の説明や、飛行の起源、恐竜から鳥が進化したとする説の論争、合成化石のアルケオラプトルにまつわる学者の論争などのエピソードについて書かれています。
本の初めのほうで書かれているのは、始祖鳥化石が見つかった時代が恐竜よりずっと前なのに、いまだに爬虫類と鳥類を結ぶミッシングリンク(失われた環)というのはおかしい、というよくある理屈です。飛行の起源についての議論もあります。木から飛び降りたとか、地上を走って飛び立ったとか・・というよくある話です。
もちろん、著者は分岐論を支持しているわけではなく、全体として、一部の鳥類学者の主張に似ています。
始祖鳥はその発見された時代や標本の美しさからよく取り上げられるのですが、羽根の生えた恐竜の一種に過ぎず、進化の途中の単なる通過点です。
その意味で、ミッシングリンクとして、過大評価するのはおかしいでしょうね。
最近の系統研究で用いられる分岐学では、時間の概念がありません。というのは、分析に使うパラメーターに年代は含まれていないため、分岐した年代については何も言えないのであります。
しかし、生物はいつも最短の道(最節約的系統)をとって進化したとは限らない。つまり、分岐学的手法には大きな誤りがある可能性があるのも、面白いところ。
■
始祖鳥は王座追放、新たなイコン探し じつは、このあたりもわきまえていて、「分岐論者にっとって飛行の起源なんて二次的なもの」とあります。
始祖鳥は単なる通過点というのも織り込み済で、で、分岐論者たちは、始祖鳥は王座を追放され、次なるイコンを探していると、話は進みます。
代替として取り上げられているのが、バンビラプトル。原始的な羽毛を値鳥類の羽毛のように仕立て上げたというのです。学会でのエピソードもありますが、2000年の時点でまだ遼寧省の羽毛恐竜がそれほど見つかっていなかったのですから、バンビラプトルどまりです。
■
なぜニセモノか、説得力はない この著では、"10種類の「進化のイコン」について検証し、それらは捏造を含む事実の歪曲、うそ、ミスリード、やらせなどに特徴付けられることを明快に示している"というのです。
しかし、始祖鳥の話をメインに読んだのですが、なぜこれがニセモノなのか、進化論を否定する根拠や主張が伝わってきませんね。
そもそも、鳥類とは何なのか、「鳥類の定義」が不明瞭です。アラン・フェドゥーシアの
鳥の起源と進化(平凡社)もそうですが、鳥の定義があやふやだから、それに続く系統の話が全てあいまいになってしまうのです。