そんなときに参考になるのが、新編 家畜比較解剖図説〈上巻〉と新編 家畜比較解剖図説〈下巻〉です。
家畜(ウシやウマ)と家禽(ニワトリ)の解剖学書です。2003年に全面改訂されました。
上巻は骨格と筋肉、消化器について、下巻は、内臓や神経系と外皮について書かれています。発行元の養賢堂で目次などが紹介されています。上巻と下巻をどうぞ。

獣医のために書かれているのでしょう、骨の形態と構造から始まって、各部位の骨や筋肉が、イラスト共に、細部まで詳しく解説されています。
たとえば、ニワトリの筋肉だけで、20ページもあります。骨の名称にはほとんど英名があるので、論文と比較するときに役立ちます。下巻では、ニワトリの気嚢などについても詳しく紹介されています。
■ニワトリの長翼膜張筋
下は、ニワトリの前肢です。筋肉は骨にそってついているものと思っていたら、長翼膜張筋のように、肩(浅胸筋)と手首を結ぶ筋肉もあるのですね。
翼膜の緊張のためにあるとされています。骨格との間に膜が出来て翼としての面積が増えますから、ある程度飛行できるようになった羽毛恐竜にもあったかもしれません。

図は、ニワトリの前肢:新編 家畜比較解剖図説〈上巻〉の図を参考に作成しました。
■ウシの首が太い理由:前足を支える前肢帯筋
人と家畜の体系の比較という解説もあります。ヒトの肩甲骨は鎖骨と関節し、鎖骨は胸骨と関節していますから、上肢帯(肩甲骨)は脊柱と関節していることになります。
一方、4足歩行のウシなどでは、前足は肩甲骨としか関節しておらず、肩甲骨は脊柱とは直接結合していません。
これを支えるのが強力な前肢帯筋です。下のイラストのように、首や腹部から数本の骨格筋が、前足を脊柱のサイドにしっかり保持するのです。
たとえば、赤く示した頭蓋骨の付け根あたりから伸びる上腕頭筋(Brachiocephalic muscle)は、肩甲骨ではなくて上腕骨(稜)につながっています。上腕をあげたり、首を動かしたりする筋肉です。
この筋肉のため、牛の首は太いのですね。青の広背筋も上腕骨につながっています。緑の胸筋は直接筋肉(大円筋)につながっています。
逆に、前足が直接つながっていないことでゆとりが生じ、前足の着地するときに、スプリング(弾力)の役目を果たすのだそうです。

図は、牛の前足とそれをサポートする前肢帯筋:新編 家畜比較解剖図説〈上巻〉の図を参考に作成。黒いのが筋肉の模式図。緑色が肩甲骨で、黄色が上腕骨です。
体重の重い竜脚類にも似たような、直接、上腕骨につながる筋肉があったかもしれません。もちろん、上腕骨側にも筋肉がつく部分(稜)が必要ですが。とすると、前脚の前のほうはより太くたくましくなったことでしょう。
竜脚類の参考には、ゾウやキリンなどの解剖図もほしいところですね。
はっきり言って、恐竜の骨格を見るときに、家畜を参考にするのは誤りとしか言いようがありません。またデタラメな恐竜像が広がるにすぎないじゃないですか。古生物学者には呆れた話だと思います。
家畜とはいえ、野生から家畜化で、骨格や筋肉の基本的な構造が大きく変化するものでしょうか。肉の味はともかく(^^;;。
ブログの主旨は、野生にしろ家畜にしろ、系統の異なる恐竜の復元に全面的に参考にするというわけではなく、部分的には、参考になる部分もあるんじゃないでしょうか、という程度ですが。
恐竜の参考になるかどうかは別にして、解剖図説は詳しく書かれており興味深い本ですね。
恐竜の骨格を見ると、「こういう体重の支え方もあるのか」などと、家畜の骨格との相違点を楽しめるというものです。
この本は、そういう意味ではおすすめと思いますよ。
もちろん、家畜の筋肉や骨格の構造であっても、復元に応用することはできるでしょう。四足歩行のほ乳類と四足歩行の恐竜では、骨格的特徴などに異なる点も多いですが、共通する筋肉も多かったと思います。それぞれの筋組織の大きさやバランスが違うと考えるほうが妥当ではないでしょうか。
ましてや、野生であるか家畜であるかで、その動物の筋組織に大きな違いがあるとも思えません。発達のバランスが変化するだけなのでは?
そもそも恐竜の生きた姿を確認することは出来ないのですから、「またデタラメな恐竜像が広がるにすぎないじゃないですか。」という発言はナンセンスです。
アロサウルスIn千葉さんは、「これが正しい恐竜の姿だ」ということを責任を持って発言できる研究か何かをされているのですか?